練馬区豊玉中の、その名も豊の湯さんは2014年の9月末で廃業されました。
千鳥破風に唐破風を備えた立派な寺社造りですが、入り口はご覧のとおり、円形自動ドアを備えたフューチャー感あふれるモダーンな作り。言い換えれば「バブリー」笑。
電飾も見えます。夜はチカチカと、さぞや賑やかでありましょう。しかしこの日、僕は一番風呂に浸かるべく、日の高いうちから銭湯ジョグで来てしまいました。
あいかわらず、間の悪い男です。
豊の湯さんの入り口は両脇を店舗兼住宅に挟まれ、一歩奥まったところにありました。
この奥ゆかしい入り口の造りは、都内のお風呂屋さんでは珍しくはありません。なぜ道路に入り口を面さないのか。どのような意図があってのことなのか(駐輪スペースを設けたかった?)、以前から不思議でなりません。
クリーニング屋のシャッターに貼られていた告知を見て、店舗兼住宅を含む豊の湯さんの一角がアパートに建て替えられること、オーナーは中野区の新越泉さんであることを知りました。
設計・施工者は旭化成ホームズ。一時期、やはり旭化成だか、旭化成ホームズだかが手掛けた「ヘーベルハウス」ブランドの新築アパートに住んでました。それはそれは安風情でした。あらゆるところがプラスチックで作られていました。蛇口から湯を出そうものなら、外壁に設えられた湯沸かし器が動作して、壁がビリビリと鳴り響くのでした。
管理会社も旭化成の名のつく会社でした。退去時にクリーニング代を請求してきました。宅建主任者でもある僕は、都のガイドラインを片手に対抗しました。1万円そこそこに値下げさせました。
本来はまったくもって払う必要のない金です。少額訴訟を起こせば必勝です。しかし、めんどくさくて妥協してしまいました。何が言いたいかと申しますと、旭化成という会社はウンコだということです。
なお、中野区の新越泉さんは今も営業中です。
豊の湯さんの東側、道路に面してコインランドリーがありました。そして豊の湯さん自体、豪勢な建物をしていることがわかります。
ぐるりと回って、戻ってくると、僕と同じく一番風呂を待ちわびる常連さんがいらっしゃいました。
ふと振り返ると、看板にこんな一言が書かれていました。
男湯の一番風呂は僕だけでした。
フロントの中年男性に写真を撮ってもよいか、尋ねました。快諾して下さりました。
夏の終わり特有のしぶとくも強い日の光のせいで、脱衣場はひときわ陰り、心なしか陰鬱な雰囲気さえしました。
屋根 in 屋根。わが街足立区の曙湯さんライクです。
屋根の上に乗っかっているのはサウナマットでしょうか。なぜ。誰が。
格天井から吊り下げられた蛍光灯がぼんやりと灯っていました。
脱衣場の屋根のファザード、「TOYONOYU」といかにも特注の、手の込んだ大きな、ブルーのロッカー札、配管の目隠しに飾られた造花を見て、華やかりし頃を想起してしまいました。
寂しく、また辛くなりました。